梨木香歩さんと師岡カリーマさんの往復書簡集『私たちの星で』(岩波書店、2017)。グローバル化が行き詰まり、分断が深まる世界の中で、ハイブリッドな背景をもった二人の女性作家が他者理解と多文化共生の展望を探る・・・。
特に印象に残っているのは、師岡さんが「日本は受け身で外国の文化を受け入れていた時代のほうが創造的だった。海外に積極的に発信しようとしている現在はどこか貧しく見える」(筆者要約)と述べているところ。子供のときに見た、言葉少なに毎日ものづくりや漁に励む故郷の人々のことを思い出す。日本の姿を伝えられるのは学者や知識人ではなく、地域に根差して生きるこれら「忘れられた日本人」ではないだろうか。
2019年11月28日