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研究者。PhD。専門は社会哲学、開発学、平和研究。社会発展パラダイムを問いなおし、持続可能な未来社会を構想するコミュニティ・デザイン理論の研究を行っている。脱成長、脱開発、トランジション・デザインがキーワード。 Researcher: Areas of specialization are social philosophy and critical development and peace studies. Working on community designing in line with the ideas of degrowth, postdevelopment and transitions design.

【新刊論文】「人新世とAIの時代における脱成長」

この度、総合人間学会編『人新世とAIの時代における人間と社会を問う』が本の泉社より刊行されました。

小生は「人新世とAIの時代における脱成長」という論文を寄稿しています。

人新世の科学的言説、トランスヒューマニズム、持続可能な開発が絡みあいながら「緑の経済成長」パラダイムを形成するプロセスを、欧州の事例を中心に考察。その対案としての脱成長のシナリオを検討しています。

人新世研究、グローバル政治経済学、社会思想史、科学思想史、技術哲学などの複数の文脈を横断しながら、多面的な問題に一本の糸を通して整理するにはどうすればよいか、大変苦労しました。「開発新世(the Developmentocene)」という新しい概念を導入しています。

納得のいく論文に仕上がりました。是非、多くの方に読んで頂きたいです。


追記)本論文の参考文献リスト(70頁目)に、下記引用論文の記載が漏れておりました。この場を借りて、書誌情報を追加させて頂きます。

Yusoff, K. (2016) ‘Anthropogenesis: Origins and Endings in the Anthropocene’ Theory, Culture & Society, Vol. 33 (2): 3-28.


詳細は、出版社ウェブサイトまで。

https://honnoizumi.co.jp/book/2022/0617.html

【学会報告】食と脱成長:〈緑の経済成長〉パラダイムをいかにして克服するか?

6月18日(土)、日本平和学会(PSAJ)で「食と脱成長:〈緑の経済成長〉パラダイムをいかにして克服するか」という報告を行いました。要旨を Researchmapポータルにアップしています。

気候変動の複雑な現実を前に、食の問題は一筋縄ではいかない問題に直面しています。今回は、食の政治経済学と食の哲学の最新の研究を交差させるかたちで、脱成長と食の関係を考察してみました。

とはいえ、それほど構築された議論を提供できたわけではありません。報告のために数カ月前から準備を進めていましたが、解けない問題があまりに多すぎて、研究は迷宮入り。最終的に行き詰まってしまいました。

今回の報告の最大の収穫は、研究中に行き詰まった難問を「行き詰まった、解決できない、困っている」と率直に報告し、抱えている問題をオーディエンスと共有できた点。主義主張を述べたり、安易な対案を提案するよりも、躓き石となった点と素直に向き合い、わからないことをわからないと言う。学問における誠実さってそういうところにあると思います。良心にしたがって報告できて良かったと思います。

他の登壇者、討論者、オーディエンスとのディスカッションも、考察を整理するための手助けとなりました。この場を借りて感謝申し上げます。

それにしても、この分野は本当に興味が尽きない。これからも視野を広げて研究していきます。