目次
序章 二一世紀の豊かさと解放──北と南の対話へ向けて……中野佳裕
- 本書について
- 問題設定
- 本書の構成
第Ⅰ部 ブエン・ビビールと関係性中心の哲学――ラテンアメリカの革新
第1章 開発批判から〈もうひとつの経済〉の考察へ――多元世界、関係性中心の思想……アルトゥロ・エスコバル
- はじめに──これまでとは異なる経済と、これまでとは異なる様式の経済学
- 開発から〈ポスト開発〉へ
- 存在論次元での二重構造と近代の問題構制(プロブレマティーク)
- 社会運動と関係性の再生
- 非自由主義的な社会形態および関係性中心の存在論
- 転換および/あるいは移行か?――多元世界へ
- 結 論
訳者解説 ラクラウ理論の読解のために……中野佳裕
- 出発点としての実践的問題関心
- 現代思想における言語論的転回
- 反本質主義の政治理論へ
- ポピュリズムの論理の解明
第2章 政治的構築の論理と大衆アイデンティティ……エルネスト・ラクラウ
- ポピュリズムとは何か?
- 極端な制度還元主義に対抗して
- ポピュリズム──多様な要求の水平的節合を生み出す等価性の論理
- ポピュリズム──新しいタイプの垂直的権力の構築へ
- 制度還元主義の論理とポピュリズムの論理の節合
- 民主主義社会について
- 左派とポピュリズムの関係
- ラテンアメリカの事例から見る民主主義モデル
第3章 ラテンアメリカにおける国家の再建……ボアベンチュラ・デ・ソウサ・サントス
- 「民主化」への移行
- 国家の再建──七つの困難との直面
- 植民地主義と資本主義の終焉を目指して
第4章 発展に対するオルタナティブとしてのブエン・ビビール――周辺の周辺からの省察……アルベルト・アコスタ
- 世界の周辺にある社会のさらに周辺から現れたブエン・ビビール
- ブエン・ビビール──構築・再構築中の提案
- 人間と自然の関係の再生を目指して
- ブエン・ビビールを基礎とする、これまでとは異なる経済
- 困難だが不可欠なプロジェクト
第Ⅱ部 社会民主主義の隘路から抜け出す――ヨーロッパ・北米の挑戦
第5章 ヨーロッパの左派――その歴史と理論を振り返る……ジャン=ルイ・ラヴィル
- はじめに
一 ヨーロッパ左派の歴史を振り返る
- フランス革命から一九六〇年代まで
- ヨーロッパ左派の分裂
- 危機に陥った左派
二 解放のプロジェクトと理論上の諸問題
- 社会的保護を優先する社会民主主義
- 批判理論と支配の分析
- 資本主義と民主主義の間の緊張関係
- 〈南〉の認識論的支柱
第6章 生態学的カオスの脅威と解放のプロジェクト……ジュヌヴィエーヴ・アザム
- 生態学的な危機なのか、それとも生態系の崩壊なのか?
- 運命の共同体と政治共同体
- アントロポセン(人新世)の時代
- 一九八〇年代に起きた断絶
- 有限な世界において、人間の解放と自由はどのような意味をもつのか?
第7章 生産力至上主義との決別、解放の条件……フロランス・ジャニ=カトリス
- イントロダクション
- 豊かさの価値の計算可能な基礎
- 新しい指標か、それとも指標の終焉か?
- 経済至上主義は常に生産力至上主義に基づいている
- 豊かさの政治経済学のために
- 結 論
第8章 社会のすべてが商品となるのだろうか?――資本主義の危機に関するポスト・ポランニー的省察……ナンシー・フレイザー
- 三つの次元における危機
- 擬制的商品化をどう解釈するか?
- 二一世紀の擬制的商品化
- 結 論
第Ⅲ部 コミュニティの再構築を目指して――日本の課題
第9章 「脱成長の福祉国家」は可能か――ポスト資本主義とコミュニティ経済……広井良典
- 問題の所在
- 資本主義の進化と社会化
- コミュニティ経済の生成と展開
- 地球倫理の可能性
第10章 コミュニティの社会学から社会史へ…… 吉原直樹
- はじめに
- 社会学から見たコミュニティ
- ジェイコブズの「新しい近隣」
- サロンの「かたち」
- 「創発するコミュニティ」と節合のメカニズム
- 新たな社会史の位相
- むすびに代えて
第11章 民主政治の試練の時代──民主主義の再生のために……千葉 眞
- はじめに――民主主義の試練の時代
- ポスト・デモクラシーの時代なのか
- 自由民主主義は「志の低い」デモクラシーなのか
- 社会民主主義の今後
- むすびに代えて──民主主義の再生のために
第12章 〈南型知〉としての地域主義──コモンズ論と共通感覚論が出会う場所で……中野佳裕
- はじめに
- 玉野井芳郎の地域主義──その残された問題領域
- 共通感覚論から〈南型知〉へ──中村雄二郎の問題提起
- 未完の対話を超えて
- 二一世紀の「共」──コモンズ論と共通感覚論が出会う場所で
あとがき……中野佳裕