自然が見ているという感覚

故郷で暮らしていると、半島の地形のせいか、周囲の自然に見られているという感覚に屡々陥ることがある。潮風が身体に触れるとき、御手洗湾の波音が家の中に入ってくるとき、峨眉山の木々がざわめくとき、千坊山にトンビの鳴き声が反響するとき。それらの感覚は聴覚や嗅覚や触覚に働きかけるものではあるが、「山が見ている」「風が見ている」「海が見ている」という表現でしか語り得ないような、そんな瞬間があるのだ。

「自然が見ている」というこの感覚の奥底には、一体何があるのだろうか。探求してみたい。

中野佳裕

2021.03.17