2022年10月29日付の図書新聞に、拙著による『開発との遭遇』(アルトゥーロ・エスコバル著、北野収訳、新評論、2022年刊)の書評が掲載されました。
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文学私選 My Favourite Literature
私は哲学書よりも文学作品を通じて「考えること」を学びました。子供の頃は読書が苦手で、好んで読んでいたのは日本昔話や竹取物語/平家物語などの日本の古典くらい。黙読するよりも、朗読して言葉の音の感触やリズムを楽しんだり、物語を聴いて覚えるのが好きでした。自分の感性に合う本と出会えるようになったのは、大人になってからです。
これまで読んだ文学作品の中で、特に好きで繰り返し読んでいる作品をリストアップしてみました。シェイクスピア、ルイス・キャロル、フローベール、ジョイス、イヨネスコ、ベケットあたりは原書で読むと圧倒的に面白いです。
海外文学の中で一番多く読んでいるのは、『ハムレット』。『リア王』と『ゴドー・・・』がそれに続くでしょう。過去最も心に残っている作品は、ボルヘス『砂の本』所収の短編「ウルリッケ」。幻想的で美しい物語です。言葉遊びや物語の軽快なテンポを楽しめるのは、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』シリーズ、イヨネスコの戯曲、フローベールの『ブヴァールとペキュシェ』。詩人で忘れられないのは、リッツォスとT・S・エリオットです。
日本文学は、近現代よりも古典の方が圧倒的に好きです。『竹取物語』『平家物語』以外では、能楽の戯曲が気に入っています。近代の作品としては、谷崎の「刺青」が私にとってのスタンダートとなっています。石牟礼道子さんの作品は、能楽の戯曲「不知火」や長編「春の城」など、内容的にも文学ジャンル的にも魅力的な作品が多いですが、繰り返し読んでいるのは、下記に挙げた二つの作品です。
今夏再び手にしているのは、ゲーテの『ファウスト』。物語の壮大なスケールに圧倒されます。
海外文学
- ホメロス『イーリアス』『オデュッセイア』
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』
- ソポクレス『オイデプス王』『アンチゴネ』
- セルバンテス『ドン・キホーテ』
- シェイクスピア『リチャード3世』『ハムレット』『リア王』『ヴェニスの商人』『冬物語』『ソネット』
- ゲーテ『ファウスト』
- ヴォルテール『キャンディード』
- フローベール『ブヴァールとペキュシェ』
- ユゴー『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』
- エドガー・アラン・ポー『メエルシュトレエム』
- ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
- ジェイムス・ジョイス『ダブリン市民』『若き芸術家の肖像』『ユリシーズ』『チェンバー・ミュージック』
- リルケ『若き詩人のための手紙』
- サルトル『嘔吐』
- サンテグジュペリ『人間の土地』
- エメ・セゼール『帰郷ノート』『植民地主義について』
- エリオット『荒地』『四つの四重奏(Four Quartets)』
- イヨネスコ『授業』
- ベケット『ゴドーを待ちながら』
- ボルヘス『砂の本』
- ウンベルト・エーコ『前日島』
- リッツォス『括弧』
- ミラン・クンデラ『冗談』『無知』
日本文学
- 『竹取物語』
- 『平家物語』
- 『古今和歌集』
- 『新古今和歌集』
- 『宇治拾遺物語』
- 『夕顔』(能楽)
- 『土蜘蛛』(能楽)
- 『鵺』(能楽)
- 『卒塔婆小町』(能楽)
- 源信『往生要集』
- 世阿弥『風姿花伝』
- 泉鏡花『二,三羽――十二,三羽』『草迷宮』
- 谷崎潤一郎『刺青』『春琴抄』『少将滋幹の母』『人間が猿になった話』
- 木下順二『夕鶴』
- 石牟礼道子『苦海浄土』『椿の海の記』
中野佳裕
2022. 8. 21.