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研究者。PhD。専門は社会哲学、開発学、平和研究。社会発展パラダイムを問いなおし、持続可能な未来社会を構想するコミュニティ・デザイン理論の研究を行っている。脱成長、脱開発、トランジション・デザインがキーワード。 Researcher: Areas of specialization are social philosophy and critical development and peace studies. Working on community designing in line with the ideas of degrowth, postdevelopment and transitions design.

フランソワ・ケネー没後250周年企画

日仏経済学会では、フランソワ・ケネー没後250周年を記念して下記の大会および特別講義を開催します。

詳細は、日仏経済学会の公式ウェブサイトをご覧ください。


12月15日(日) 日仏経済学会2024年度大会

日程:12月15日日曜、10:00-18:00
会場:明治大学駿河台校舎・リバティタワー16階 1163教室

プログラム
 10:00-10:10 開会
 10:10-10:50 第1報告
   テーマ:「久保田明光教授とケネー」
   報告者:八木尚志(明治大学)
  11:00-11:50 第2報告
    テーマ:「平田清明教授とケネー」
    報告者:井上泰夫(名古屋市立大学・名誉教授)
  11:50-13:00 昼食
  13:00-13:50 第3報告 
    テーマ:「菱山泉教授とケネー」
    報告者:黒木龍三(立教大学・名誉教授)
14:00-14:50 第4報告
   テーマ:「ケネー『租税論』再考:国民の富と為政者の富」
   報告者:山本英子(成蹊大学・明治学院大学)
14:50-15:10 休憩
15:10-16:00 第5報告
   テーマ:「ケネーの『法の精神』批判:植民地論と
「商人の体系」概念の再構成」(仮題)
    報告者:定森亮(名古屋経済大学)
16:10-17:00 第6報告
   テーマ:「明治・大正の日本のケネー研究」
   報告者:田中秀臣(上武大学)
17:10-17:30 第7報告
   テーマ:「日本大学図書館経済学部分館所蔵
ケネー『経済表』第3版について」
   報告者:石田教子(日本大学)
17:40-18:00 日仏経済学会総会

終了後に懇親会を予定

この企画は次の助成を受けています
【助成】公益財団法人日仏会館

問い合わせ:八木尚志 yagi8 [at] meiji.ac.jp
吉岡 努 yoshioka060 [at] toyo.jp


フランソワ・ケネー没後250年記念講演会

明治大学大学院政治経済学研究科・特別講義
日時:2024年12月16日14:00-17:00
会場:明治大学駿河台校舎・グローバルフロント1階
グローバルホール
参加自由(研究者・一般を問わず参加を歓迎します)

フランソワ・ケネー没後250年記念講演会 
14:00-15:00 
八木尚志「ケネー『経済表』について」
15:20-17:00 (明治大学大学院・特別講義)
米田昇平教授「ケネーと18世紀フランス経済学」

『脱成長と食と幸福』を刊行しました


訳者から読者の皆様へ1

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。この度、訳書『脱成長と食と幸福』を白水社より上梓しました。御高覧頂ければ幸甚です。

セルジュ・ラトゥーシュの単著の翻訳はこれで6冊目となります。本書の制作にあたっては、翻訳技術を壱から学び直しました。原文の構文を解きほぐし、一語一語の意味と文法上の機能からくる含意を丁寧に訳出することで、直訳も意訳も避けることができました。訳者解説では、翻訳に際して行った技術的な工夫についても若干触れております。

また、かねてより音読した時のリズムを重視して文章を書いてきましたが、今回は言葉(音)を足すよりも引くことを意識しました。原稿用紙に鉛筆で仕上げた第一訳稿を読み返すと、言葉の息継ぎの場所が過去の原稿とは違っていて新鮮です。

本書の翻訳過程で考えたこと・学んだことの一部は、環境・平和研究会(2024年3月10日)の報告レジュメにまとめています2。関心のある方は Researchmapのポータルサイトから御覧ください。



解説は小生の十八番と言える方法で執筆しました。テクスト分析の手本となるよう、読解の手続きをひとつひとつ開示しています。(構成、文体、全体の色調については、クラシック音楽の楽譜に付されている楽曲解説をモデルにしました。)

読解に関して常々心掛けているのは、著者の思考に寄り添いつつ、その構造を明らかにしながら、テクストの未完の可能性を開いていくことです。

今回の解説では、冒頭を飾るロシ・ブライドッティ(Rosi Braidotti)の引用文に脱構築的読解の痕跡を残しました。ドゥルーズ派のフェミニスト理論家である彼女の著作3を突き合わせることで、本作で奏でられる脱成長の旋律を、フェミニズム幸福論やポスト・ヒューマン倫理、そしてスピノザ的な力能の哲学へと移調(transpositions)できるのではないかと期待しています。

読者の皆様には是非、本文・原註・訳註・解説の間を往復しながら本書の奏でる様々な音色(言葉)の世界を楽しんで頂きたいです。

それでは、楽しい読書を。Bonne Lecture!

中野佳裕

2024.8.29.


  1. このブログの文章は、本書見本を献本先に送付する際に添えた書簡を加筆修正した上で転載したものです。 ↩︎
  2. 中野佳裕「時間論としてのローカリズム:S・ラトゥーシュ『生きる技法としての節度ある豊かさ:幸福、ガストロノミー、脱成長』の翻訳を通じて考える」環境・平和研究会報告レジュメ、2024年3月10日 ↩︎
  3. Rosi Braidotti, Transpositions, Cambridge: Polity Press, 2006. ↩︎